リポート

【開催報告】夏休み子どもワークショップ「西荻にいるハチの話とミツロウねんど遊び」

どんなイベントだった?

8/3(土)に西荻窪の「西荻のことカフェ」ワークショップスペースで開催しました。
7名の小学生と兄弟姉妹、保護者の皆さんも一緒になって前半はスライドトークを聞き後半はミツロウねんど工作に挑戦しました。工作時間は20分ほどでしたが各々でミツロウねんど作品やミツロウペンで描いた絵を仕上げお土産として持ち帰ってもらいました。

なぜイベントを開催したのか?

当イベントを主催した「蜂のおじさん」こと山口です。西荻窪で養蜂を始めて9年目、杉並区内のニホンミツバチの保護活動をして7年目になります。
杉並区は東京23区に数えられますが、とくに周辺部は郊外型の自然環境を擁した地域です。私は日々の生活、活動のなかで野生のミツバチ(ニホンミツバチ)を含む多くの種類のハチや昆虫がヒトの居住エリアにも棲息していることに気がつきました。

一方で進む宅地化や緑地の減少スピードを考えると、こうした生き物たちはますます貴重な存在になりつつあります。身近にいるのに意外に気づかれないこうした生き物たちのことを伝えたいと、イベントの前半に30分ほどのスライドトークを据えました。

生きた教材としてのハチたち

「世界の食糧の三分の一は野生のハナバチの受粉によって支えられている」という科学的な試算があります。あまりに壮大で実感することが難しい話ですが、ハナバチたちがどんな生き物で何をしているのかを知ることはわりと簡単にできます。「ビーハウス」という、丸太に穴を空けた産卵場所を作ってあげるとハナバチがやって来るのです。西荻窪に設置したビーハウスにおけるハナバチどうしの争いなど、生き物たちの世界に起きるドラマもスライドショーで紹介しました。私たちの食糧や生命を支えてくれている影の存在の営みは、地域が持つ生物資源の豊かさとして多くの人に知ってもらいたいことです。

◆参考:木材の無料配布会のお知らせ/ハナバチのお家を作るプロジェクト→申込受付終了

どんなワークショップだった?

私が杉並区内で保護し西荻窪に連れてきて飼育しているニホンミツバチの群れは、1~2年のうちに逃げてしまったり寿命が尽きることがほとんどです。巣箱に残された巣を集めて濾過するとロウソクを作るロウと同じミツロウが採れます。ミツバチの生産物で圧倒的に知名度が高いのはハチミツですが、ミツロウも紀元前から人類が活用してきた重要なものです。ミツロウはカチカチの硬い物質ですが、油を加えるとやわらかく「ねんど」状になります。今回、地元産の教材での工作を子どもたちに体験してもらいたいと弊社で作った「手作りミツロウねんど」を提供しました。

保護したニホンミツバチたちが作ったミツロウです

ミツロウの新たな可能性に出会う

ミツロウは化粧品や医薬品などに多様な形で活用されています。あまり知られていない用途としてはミツロウペン「Lapico(ラピコ)」という視覚障害者用筆記具のインクにも使われています。ミツロウペンは東京・大田区にある人工心臓など最先端医療機器の開発も手掛ける安久工機が20年前に開発を始めたユニークな機器です。

ミツロウペンの純正インクとしてはドイツの玩具メーカーのミツロウねんどを使いますが、弊社では3年前からミツロウペンのインクとなる国産のミツロウねんどを作ることができないかと安久工機の協力を得て研究を続けてきました。そしていま生産に向けて、あるていど現実味を帯びた段階に来ました。

子ども達に使ってもらいたいわけ

じつは今年の春、あるイベントに試みにミツロウペンを持って行ったところ、子ども達が楽しそうに自由に形を描いて遊ぶ姿を見てそれまでの認識を改めました。ミツロウペンは視覚障害者用筆記具として誕生しましたが誰が使ってもよいものです。目の見える人が見えない人にメッセージを送ることにも使えます。これはあたりまえのことですが、私はミツロウペンは視覚障害者だけが使うものと無意識に決め込んでいたことに気づきました。そもそも国産ミツロウねんど生産の目的はコストの低減化です。ひいては、価格を気にすることなくミツロウねんどを使えることによるミツロウペンの普及促進です。遊びの「専門家」である子ども達に大いに使ってもらうことは普及の一助になるはずです。これからも機会があればワークショップを開き、多くの人の手でコミュニケーションの新たな未来像が描かれることを期待しています。

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